11月6・7日秋晴れのもと、
MOKスクール恒例の秋のフィールドツアーへ行ってきました。 総勢20名程で、和歌山は田辺へ向かいます。 一日目は、山長商店さんの植林地→貯木場→工場と、木の動きに沿っての見学です。 山長商店さんの山は紀伊半島南部に約5000haも占めています。 その山の木を植林から育成、伐採、製材、乾燥、仕上・強度検査、選別、プレカットに至るまでの全ての工程を一貫して提供しているのです。 松本さんの説明は、パネルや材を使って丁寧で非常に分かりやすくスクール生に好評でした。 95%以上が個人所有であるという和歌山の山の特徴によって良材が生まれた、 と松本さんはおっしゃっていました。 山持ちさんが互いに切磋琢磨した結果なのでしょうか。 もちろん、近くには奈良吉野にも良材があります。 ただ、それぞれの特徴が異なるのです。 樽丸林業を起点に発達してきた奈良の吉野では 密林(10,000本/ha)による緻密な年輪を持つ材が、 一方の田辺では建築用材としての材が必要とされました。 そのため、田辺の材は(5,500本/ha)芯に近い部分では少し年輪の間隔が開いて、外側では密な年輪となるのです。 目的に応じた結果が各地の材の特徴を生んでいるのです。 さて、今回の田辺の山の中でも〝住み分け〟が行われています。 「適地適木(てきちてきぼく)」 これは木々の育成のしやすさによって、 例えば杉は水分の多い山の裾や谷に、一方山の上方には桧を植えるという 山の人たちが基本としている言葉です。 山側の「適地適木」があってはじめて 工務店・設計者の「適材適所」が成立するのです。 木には〝腹〟と〝背〟があるのをご存知でしょうか。 斜面に立つ木は、光を求めて開けた方向(写真右側)に枝を伸ばす傾向があります。 そして地面と立木(足元)との関係に注目すると、鉛直方向まっすぐではなく、 少し膨らんでから上へと伸びているのが分かります。 これは、材としてまっすぐっでないために良材ではない、とされるかもしれないですが全くの逆なのです。 横架材(梁)を考えた時に、腹の部分を下、背の部分を上にすることで粘り強くなります。 必然的に室内から梁を見上げた時に節の少ない面が腹となって、 力学的にも美学的にも理にかなっているのです! 青空のもと、木々に囲まれてお昼を食べた後は貯木場へ向かいます。 ここでは元玉と、2番玉以降のものに分けられて長さごとに管理されています。 見学している間にも次々と丸太が運ばれてきます。 年間30,000㎥の原木の出入りが行われているのです。 さすが年間700~800棟の物件に対応されている山長さんです!。 山から運ばれてきて、 トラックの荷台に積まれた丸太を土場に〝置く〟作業を見ることができました。 まず丸太を〝置く〟スペース横にトラックをつけます。 そしてチェーンやつっかえを外して 運転手さんが反対側からチェーンを引くと、 トラックを傾けて丸太は一気に定位置に納まりました。 迫力のある、なんとも原始的な手法に圧倒されながら次の目的地へ向かいます。 最新のシステムが稼働しています。 まずは、減圧式乾燥機。 この乾燥機では機内の圧力を最大0.2気圧まで減圧することができるそうです。 減圧することで水の沸点を下げて従来よりも低い温度(70数℃)での乾燥か可能になります。 これにより、①表面・内部割れの減少②白味部分が茶色くならない、といった利点があるのです。 この減圧乾燥機1機で50㎥(実際には桟を入れる為45㎥程度、柱で900本くらい)の材が一度に乾燥可能です。 次は、徹底された品質管理です。 ここではヤング係数と含水率を測定しています。 基準値に満たない材はレーンから外されます。 リアルタイムに測定結果が機械表示され、材自体に印字されます。 写真の材はプレカットも済み梱包されて納品待ちのものですが、 「SD20 E90以上」の数字が印字されているのが分かります。 含水率20%、ヤング係数90以上といった情報が全ての材に対して表記されます。 ちなみに写真右手に見えている水色と白色のテープは、物件ごとに組み合わせを変えて、積み下ろしの際に認識しやすくするために全ての梱包に付けられています。 さて、ここで測定された結果は選別の工程で重要となります。 例えば、ヤング係数90と110の材があったとします。 基準値を90以上としているなら、この2つの材は対等のものとして扱うことが可能ですが、山長商店さんでは違います。 より荷重のかかる1階柱にヤング係数110の材を、屋根荷重のみで比較的荷重の少ない2階柱にはヤング係数90の材を選別するのです。 簡単にはまねできない細やかな対応です! 日中の見学の場とはまた異なった交流・意見交換ができ有意義なものとなりました。 日が変わって2日目は、 榎本社長宅(設計:渡辺明氏)を社長自ら説明していただき見学させていただきました。 (個人住宅のため写真掲載は控えさせていただきます。) その後は語り部さんの説明を聞きながら、短距離ではありましたが熊野古道を堪能し、熊野本宮大社へ参拝、熊野本宮館の見学を行いました。 ここでも榎本社長が展示の地図を前に木材のルートを説明下さいました。 榎本社長、榎本常務はじめ、社員の方々、松本さんのご協力のもと非常に有意義な2日間となりました。 ありがとうございました。 今年度のMOKスークールは12月の講義を残すのみとなりましたが、 来年度のフィールドツアーも現在計画中です。 講義では伝わりきらないものがフィールドツアーにはあります。 みなさんにも是非山の声を、工場の声を、お聞きいただきたと思います。 #
by MsARCH2
| 2010-11-09 08:09
| MOKスクール
過ごしやすい秋の日に、プレカットの打ち合わせと木配りを行いに三重県松阪へ行きました。
9月に地鎮祭を行った和泉の家の打合せです。 Msのプレカットと言えば㈱コウヨウさん。プレカット工場と言っても程度の差は様々です。 Msの住宅はJパネルを柱間に落とし込むため、柱、梁にしゃくり(溝)を入れるなど、一般的な住宅より手間がかかります。 コウヨウさんは三澤も太鼓判を押すレベルの高いプレカット工場。その辺りも難なくこなしてくれます。(スタッフの方々がとても優秀なのです!) また、設備面もすごい! ドイツのHundegger社製のプレカットマシンを置いています。 外国製の機械はカラーリングもオシャレです。 見た目でけでなく中身もすごいこのマシン。 最大加工寸法が長さ12m、幅300×高さ450! 3次元の加工機能も組み込まれているので登り梁×登り梁など複雑な加工も可能です。 このマシン、日本で4、5台しかないそうです。 午前中、みっちり打合せを行い、お昼からは木配り。 智頭のサカモトさんから届けられた構造材は夏に検品を行った時から 修正挽きを行い、モルダーを掛けられきれいな木肌が現れています。 期待通り!のきれいな材です。 この日は三重県の製材関係の方々が何人か現場にいらしたのですが、 みなさん、智頭杉の美しさに感心しきりでした! 木配りはMs日記でもお馴染みのプロセス。 番付けとも言いますが、どの材をどこに使うかを決めていく作業です。 三澤と棟梁が相談しながら、設計者の目、大工職の目、両方を加味しながら決断していきます。 簡単なようですが、経験と集中力のいる作業。これはベテランの職人でないとできないのです。 三澤が手に持っている板図は、材のサイズごとに色分けしている伏図です。 番付けが終わるとチョークで塗りつぶしていき、全ての材に番付けを行います。 この日は三澤康彦チームと別に三澤文子チームもコウヨウさんへお邪魔しました。 和泉の家より少し遅れて着工した池田市の住まいの材料検査です。 こちらは柱・垂木・棟梁を桧、梁・桁を杉で構成するダイナミックな住宅。 材は三重の速水林業さんでお願いしています。こちらも完成が楽しみです。 #
by MsARCH2
| 2010-10-21 19:00
| 新築
10月の始めに鹿児島にあるK邸に詳細調査に行ってきました。鹿児島の建築家、自然木の村田さんからの依頼です。私は屋久島から参加しました。
大阪からスタッフ含め5人、岐阜アカデミーから3人の大所帯で鹿児島に向かいました。岐阜アカデミーからは何と!車で鹿児島まで向かいました。調査機器が多いため車での移動となったのですが、凄いフットワークです。3人とも御苦労さまでした。 調査するK邸は鹿児島市内から高速道路を使って40分ほどの姶良市蒲生町にあります。この地域は武家屋敷群と蒲生八幡宮の日本一の大クスが有名です。K邸も蒲生八幡宮からほど近い場所にあります。K邸は築96年の建物で、広い敷地内(300坪)には屋敷門、母屋、馬屋、蔵、畑があります。今回の調査は母屋だけになります。 蒲生八幡宮の大クスです。その大きさに圧倒されます。樹齢1500年。調査の無事を祈り一人参拝しました。 調査する母屋部分です。南側に開口部が並ぶ昔ながらの民家です。建具のデザインが凝っています。 さっそく調査準備です。大量の調査道具を運びいれます。この日は雨の予報でしたが、もちろん晴れました。私は晴れ男です。 右写真の真ん中の方が施主であるKさん現在離島で教師をされていますが来年鹿児島に戻ってこられます。そのため空き家になっているK邸を改修することとなりました。左の方が今回の調査主担当の自然木の村田さんです。格好から分かるようにやる気満々です。 私はスタッフの中島君と小屋裏調査となりました。 小屋裏です。やはり長年のホコリとネズミのフンで酷い状態です。(これが普通ですが・・・)太さの違う梁や曲がっている材料を上手く使い小屋が組まれています。約100年前の建物ですが、しっかりとした造りです。もちろん金物も使用されていません。大工技術の高さを感じます。 含水率もチェックします。湿気がたまり、含水率の高い材は腐朽等の被害が出やすいです。今回の小屋裏は空気も乾いており、含水率も良好のようです。 私が小屋裏で悪戦苦闘している下の部屋ではお施主さんに聞き取り調査です。家の歴史や、改修についての希望など、細かく聞き取りしていきます。 床下空間です。床下空間は高く、十分に人が入れます。湿気も少なく比較的良好な空間のようです。もちろん詳細調査なので床下も調べます。 床下姉妹のNさんとKさん、マスクをして完全防備で床下空間を駆け回っていました。すばらしいフットワークです。これはなかなか真似はできません。 調査も無事終了しました。帰りはたまたま近くにあった温泉へ行って調査の汚れを落としました。この調査を踏まえ耐震性能、温熱環境など含めた調査報告書と改修プランを作成していきます。みなさんおつかれさまでした。 #
by MsARCH2
| 2010-10-20 13:45
屋久島(メンテナンス)、鹿児島(民家調査)へ行ってきました。
1年半ぶりの島です。懐かしい香りです。 空気がおいしい。空が青い! 2009年4月のMs日記(「屋久島の家 完成!」)でもお知らせしましたが、 屋久島の大自然は驚異です。 関西だったらこの自然の風景をただ見て、きれいというだけですが、ここは島です。 自然は人間の存在よりとてつもなく大きいのです。 ここにくると自然は神だと、畏敬の念を持ちます。 この地形を読み取り、 高床にもして、屋根も大きく張り出し、木の壁を守ります。 ここがピロティの上階にあがる階段です。 普通の塗料ではすぐに剥がれてしまうので、 これはオスモの強靭な外部用の塗料を塗ってあります。 床下空間は、住まい手からとても感謝されました。 ここはただ単に、安楽の住む空間ではありません。 屋久島では都会の便利さはないのです。 大概のことは自分達でやり遂げなければいけません。 停電なんて日常です。 この前なんか10時間程電気がこなかった、なんて普通に言っています。 都会では10分電気が止まると、大騒ぎです。 これってパパイヤなのです。 ほんの1年前に植えたものですが、こんなに大成長しています。 今回の大工職を紹介してくれた堀部安嗣さんの 新しいお店が国道沿いに出来ていました。 やはりすごいですね!! 台風にも負けない、白アリにも負けない、の表現がいっぱいあります。 この、小端立てに石を積むのがとてもとても大変だったそうです。 見れば分かります。 右の写真が屋久島の火山岩を使用したディティールです。 今は、大阪伊丹から屋久島への直行便があります。 屋久島滞在約6時間。 メンテナンスが終わり、 Msの三澤ですから尾ノ間温泉にしっかり浸かった後は 鹿児島までひとっ飛び、約30分です。 次回は鹿児島の民家調査です。 #
by MsARCH2
| 2010-10-05 19:38
| メンテナンス
8月の半ばに藤沢の家が完成しました。
夏は大賑わいの湘南江ノ島。 そこから徒歩10分の住宅街に立つ住まいです。 住まい手のご実家を解体し、Msの木の住まいを新たに建てました。 白い外壁が湘南の街並みに映えます。 今回も耐震性、断熱性、メンテナンス性を備えた長期優良住宅です。 建替え前の家です。 両隣の家と同じく、北側の道路に迫って建っていました。 道路近くまで住まいが接近していて、圧迫感があったと住まい手は述べていました。 今回の計画では、建物を南北に長い形状として、 敷地の東側を庭として大きく開けています。 道路側の圧迫感もずいぶん和らぎました。 今までの道路見付を半分にして、東側は広く植栽スペースとしました。 元々風致地区という道路境界からの壁面後退の規定や高さ制限のある地域ですが、道路側の建物の高さはかなり低く抑えています。 とても周辺環境に優しい建築です。 屋根のある駐車場からそのまま玄関にアクセスできます。 玄関建具はアカマツの板で造った引戸になっています。 Msの玄関はほとんどが引戸です。 人を招き入れる時、玄関に入る時の動作がとても楽ちんなのです。 1階は個室と収納になっています。 床と天井はJパネル、壁は珪藻土クロスを貼っています。 2階へ上がる階段、クルミの板で造っています。 この家のメイン、LDKは2階にあります。 住宅地なので隣地は全て家が建っていますが、 LDKの位置を南に寄せることによって、 東側のお隣さんのお庭がリビングの目の前になります。 2階LDKを囲うように、広くウッドデッキを設けています。 広いデッキはメンテナンスが大変ですので、 耐久性の高いクマルという木材で作っています。 2階デッキから見ても、遠くまで視線が通り、 住宅地に住みながらにして、開放的な住まいとなっています。 さながら空中デッキです。 お隣の緑がうれしいです。 リズムよく並んだ柱、梁がとてもきれいです。 和歌山県の廣本林業さんの杉材です。 ダイニングテーブルもMsで製作した、タモ材のテーブルです。 住まい手はご夫婦とお嬢さんの3人家族。 工事中も一家で木材の塗装をしたり、 お引越し後もパネル材で家具を作ったりと、 積極的に住まいづくりに参加いただきました。 とても愛着のある住まいになったと思います。 これから涼しくなりますので、植栽などの外構工事を行います。 きれいに完了しましたら見学会をさせていただく予定です。 ご期待下さい。 #
by MsARCH2
| 2010-09-11 18:24
| 長期優良住宅
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